• nanimiru badge
  • animejp badge
  • bfj10th badge

【超かぐや姫!】「賛否がきれいに分かれて本当に良かった」山下清悟監督が語る、大ヒット後の本音

1月にNetflixで独占配信が始まり、話題を集めているアニメーション映画『超かぐや姫!』。2月にスタートした劇場公開では興行収入が17億円を超えるなど、大きな広がりを見せています。本作を手がけた山下清悟監督に、現在の心境と今後の展望を伺いました。

「月見ヤチヨ」ぬいぐるみ(右)とBuzzFeedの「バズりん」(左)とスリーショットに応じてくれた山下清悟監督

1月22日にNetflixで配信が始まったアニメーション映画『超かぐや姫!』。日本最古の物語と言われる『竹取物語』をベースに、「仮想空間」「ライバー(配信者)」といった現代の技術・エンターテイメントを融合させた世界観が大きな注目を集めました。
  
反響を受けて2月20日からは劇場公開も開始。興行収入は17億円(4月7日時点)を超え、作品に関連したクラウドファンディングも1730%の達成率(4月7日時点)に至るなど、引き続き盛り上がりを見せています。
  
BuzzFeed Japanでは、『超かぐや姫!』の制作を率いた山下清悟(やました・しんご)監督に、大ヒットを受けての現在の心境や、今後の作品づくりの展望などについて詳しくお話を伺いました。

「こんなことになるとは」

『超かぐや姫!』メインビジュアル(プレスリリースより)

――改めまして『超かぐや姫!』の大ヒットを受けて、現在の心境はいかがでしょうか。
 
まず「こんなことになるとは」という言葉につきますね。
 
もちろんある程度反響があるだろうと狙って制作はしたものの、やはりニッチな企画ですし、私もアニメ監督としての実績はこれが初という形でスタートしたので、どれくらいの方に見ていただけるかという点については全く読めませんでした。
 
最初(流行に敏感な)アーリーアダプターの方々に見ていただいていたところから、いろいろな世代の一般層に見ていただけるように広がりつつあるのですが、そんな中で私の友人のお子さんが『超かぐや姫!』を見て、キャラクターの絵を描いてくれたりしていて。こんな状況になるとは全く思っていなかったですね。
 
心境としてはすごく、めっちゃ嬉しいです。幸せだなと思います。

月からやってきた謎の少女「かぐや」(ツインエンジン提供)

――作品に対する反響の中で、「これは意外だったな」と感じた点はありましたか?
 
『超かぐや姫!』を褒めてくださっている方と、批判されている方がはっきりと分かれたところですね。
 
『超かぐや姫!』は作品としてはアニメファンの方に受けるように作ったつもりでいたのですが、内容はかなり尖った見せ方をしています。自分が作る以上、賛否もかなり分かれるだろうと思っていたのですが、「そもそも賛否が巻き起こるほど話題になるかどうか」まではあまり自信がありませんでした。
 
実際の反響を見ると「この作品を好きな自分でよかった」という方もいれば、逆に「この作品を好きでいる自分は嫌だ」というような声もあり、その間にはっきりとした分断のようなものを感じました。この作品が見る人にとって「自身の思想や価値観まで含めて語る材料にしてもらっている」感じがして、自分としては、これがめちゃくちゃ嬉しかったです。
 
結果的に反響で賛否がきれいに分かれている様子を見て、自分がやりたかったことをはっきりと出せて、ここまでしっかり作品を見ていただけたのだなと改めて実感することができました。それが本当に良かったですね。

インタビューに応じる山下清悟監督(撮影 / 安藤健二)

過去全ての仕事が『超かぐや姫!』に活きている

――ここからは山下監督のこれまでの歩みについても伺えればと思います。アニメの業界に入ったきっかけと、監督になるまでの経緯はどのようなものだったのでしょうか。
 
元々アニメの作画の仕事に興味があり、雑誌などで関連情報をよく見ていたのですが、業界に入りたいと思った直接のきっかけは、アニメ『NARUTO -ナルト-』第30話「蘇れ写輪眼! 必殺・火遁龍火の術!」でした。
 
有名なアニメーターの若林厚史(わかばやし・あつし)さんと松本憲生(まつもと・のりお)さんが組んで制作された回で、松本さんがAパートの原画を全部やられていました。とにかくアクションシーンがすごくて、絵も上手すぎるし、動きも上手すぎるし、演出もかっこいいという具合で「こんなことが人間にできるのか」と驚きました。理屈抜きの感覚で、「こういう仕事をすごくやってみたい」という気持ちになりました。私が15、6歳くらいの時だったと思います。
 
そこから絵を描き始めて、ドットで描いたGIFアニメを自身のウェブサイトにアップしていたところ、アニメーターのりょーちもさんと、沓名健一(くつな・けんいち)さんが私の作品を見て「この人をウチの会社に呼ぼう」と言ってくださいました。それを機にサテライトというアニメ制作会社に動画担当で入ることになり、キャリアがスタートしました。
 
その後、『NARUTO -ナルト- 疾風伝』でまた若林さんが演出、松本さんが原画を担当する回があり、そこに自分が沓名さんと参加することになるなど、アニメーターとして盛り上がりのピークといいますか、すごく名誉ある経験をさせていただきました。

そこからはアニメ『呪術廻戦 第1期』のオープニングなど、短尺のアニメーションの演出を長くやるようになりました。その後、まさに『超かぐや姫!』を作っているスタジオコロリドのプロデューサーから「5-10分ほどの短編作品の監督をやりませんか」とお誘いを受けました。それがポケットモンスターのオリジナル短編である『薄明の翼』(2020年)です。
 
『薄明の翼』の評判が良かったので、今回の『超かぐや姫!』で長編作品の監督のお話を初めていただき、今に至るという流れです。

――『超かぐや姫!』で、これまでの監督ご自身の経験が色濃く出ていると感じる部分はどこでしょうか。
 
やはりアクションシーンについては、原点でもある『NARUTO -ナルト-』のエッセンスがめちゃめちゃ入っていると思いますし、NARUTOの前の『NINKU -忍空-』など、「週刊少年ジャンプ」でずっと続いている忍者モノの影響は大きく受けています。

『超かぐや姫!』本編カット(ツインエンジン提供)

それ以外にもキャラクターがライブで歌って踊るシーンは、過去に『マクロスF』でヒロインのランカ・リーが踊るシーンなどの原画を担当した経験の影響もあると思います。
 
キャラクターたちがわちゃわちゃしている日常系シーンの描写は、演出を担当した『夜桜四重奏〜ハナノウタ〜』という作品で経験がありました。
 
そういう意味では、自身の過去の全ての仕事が『超かぐや姫!』に活きていると思います。逆に言うと、アニメ制作にかかるさまざまな工程を経験してきたからこそ、「基本的にどんなものでも描ける」という状態になっていたのかもしれません。
 
特に人気の作品に携わる中で「なぜこの作品は人気があるのだろう」「それ以外の作品との違いはなんだろう」といったマーケティング的な面もずっと考えてきたので、『超かぐや姫!』はこれまでの作品全てから受け取ったものでできていると感じます。

『超かぐや姫!』本編カット(ツインエンジン提供)

「自分にできないこと」を自覚し、人に頼る

――『超かぐや姫!』は山下監督のこれからのキャリアの中でどんな位置付けの作品になると感じていますか。
 
今回『超かぐや姫!』というオリジナルの長編作品を手がけたことで、ありがたいことに新たなお仕事の話もいただくようになりました。今後は、長編の自社制作を行なっていくことがベースになっていくのかなという意味で、キャリアの転換点になりそうです。
 
おそらく、『超かぐや姫!』の前から私を知っていた人と、以後に私を知った人とでは、見るポイントが変わっていくのだろうという気もしていて、「もう元には戻れない」という感覚もあります。

――オリジナルの長編作品にシフトしていく未来は、キャリアをスタートした時から思い描いていたのでしょうか。
 
もちろん、ある程度キャリアを重ねてから自分の作品を作りたいなという気持ちはあったのですが、これは本当に狭き門といいますか、望んでできることではないという認識でした。やはり周囲の関係者が「この人に長編のオリジナル作品を任せてみたい」と思ってくれるかという面もありますし。私自身、オリジナル作品については自主制作などの経験もなかったので、実際に実現するのはとても難しいのではないかと考えていました。
 
そんな中で、今回『超かぐや姫!』でオリジナルの長編作品をやらせていただくチャンスが来たことは、本当にラッキーだったと思います。

インタビューに応じる山下清悟監督(撮影 / 安藤健二)

――初の長編作品の監督にチャレンジされるにあたり、不安に感じた部分はなかったのでしょうか?
 
私は多分、いろいろな人に頼ることが得意なのだと思います。「自分ができないこと」を相当自覚しているんですね。例えば自身で企画を考えている時に「どうしても自分の企画は地味になりがちだな」となった時に、「じゃあ企画を派手にできる人は誰なんだろう」ということを常に考える癖があります。自分の弱さを知り、そこを補ってくれる人を探して頼ることができるというスキルは、けっこう強みなんじゃないかと考えています。
 
そのため、『超かぐや姫!』は初の長編作品へのチャレンジではありましたが、情熱とやる気はすごくあったので、「最後まで作り上げることができるだろう」という気持ちはありました。

『超かぐや姫!』本編カット(ツインエンジン提供)

――最後に、アニメ監督として今後の展望について教えてください。
 
とても難しい問題なのですが、最近のアニメ作品では、「音楽はライブやアイドル的なものが受けやすい」「メインのキャラクターは女性どうしで……」といった具合に、これ以外でヒットを産み出すのが難しいというくらい「ヒットのパターン」が固定化されてきている現状があります。
 
ヒットのパターンが固定化されるということは、「同じような企画しか通らなくなってしまう」という問題を孕んでいて、オリジナル作品を生み出していくという意味では多くの監督さんが危惧している点でもあると思います。
 
かくいう『超かぐや姫!』もまさに「ヒットのパターン」に思いっきり乗っかっていった作品なのですが、これから先は「ヒットのパターン」から「どの要素がなくてもいけるか」という引き算をちょっとずつ試していくことになりそうです。
 
今ヒットしている作品のパターン以外にも多分まだまだ別の可能性はあって、でもそれがまだ見えていないといいますか。新しいヒット作を生み出していくのはとても難しいことですが、やはり自分もそこに挑戦していきたいですね。
 
また、『超かぐや姫!』もそうでしたが、私は作品を作る時に「緻密な設計を前面に押し出す作品」よりは「楽しさと勢いがある作品」のほうが作っていて楽しいと感じるので、今後も「勢い」を大事にしつつ面白いオリジナル作品を生み出していけたらなと思います。

『超かぐや姫!』本編カット(ツインエンジン提供)

Netflixアニメーション映画『超かぐや姫!』

配信開始:2026年1月22日
監督:山下清悟
出演:夏吉ゆうこ、永瀬アンナ、早見沙織、入野自由、内田雄馬、松岡禎丞、青山吉能、小原好美、釘宮理恵、ファイルーズあい、花江夏樹
企画・プロデュース:山本幸治
製作:コロリド・ツインエンジンパートナーズ
アニメーション制作:スタジオコロリド / スタジオクロマト
配給:ツインエンジン