Netflix の新作シリーズ『地獄に堕ちるわよ』の配信が4月27日に始まりました。本作は、六星占術とその強烈なキャラクターで一世を風靡した占い師・細木数子さんをモデルに、彼女がいかにして芸能界の第一線で活躍するほどの影響力を手に入れていったのか、その人生を描くドラマです。
本作で細木数子役に挑んだのは、俳優の戸田恵梨香さん。戸田さんが細木さんを演じることが発表されると、SNSなどではその意外性に驚く声とともに、大きな反響を呼びました。
BuzzFeed Japanでは、細木数子さんのセンセーショナルでドラマティックな生き様を演じた戸田さんに、撮影の舞台裏について詳しくお話を伺いました。
「細木数子さんの真似をしなくていい」と言われて
――『地獄に堕ちるわよ』のオファーが来た時の心境はいかがでしたか。
まずは「とにかく台本が面白かった」という一言につきます。
一方で、細木数子さんを演じるにあたり、喋り方や見た目などが私とあまりにも離れているところが懸念点としてありました。いくら脚本が面白いとはいえ、さすがに私がやるのは失礼かもしれない、とも思いました。
しかし、プロデューサーの方から「喋り方や体型なども含めて、本当の細木数子さんの真似をしなくていい。この台本から感じる“細木数子像”を作ってください」と言っていただけたことで勇気が湧き、「だったらやりたい」と思いました。
また今回、作品が発表された後の反響の大きさもすごく感じました。改めて細木さんが、今もこれほど大きな話題を巻き起こす影響力を持った人物であることを実感し「やばい!!!」と焦ってしまいました。
――台本から感じた“細木数子像”はどのようなものでしたか。
細木さんがテレビに出演されていた時期は、私もかなり仕事をして寝る時間もないような毎日だったので、ほとんどテレビを見てなかったんです。そのため「地獄に堕ちるわよ」という有名なフレーズがあったという記憶もなく、細木さんに対しては「最近勢いのある占い師の方が人気なんだ」という漠然としたイメージしか持っていませんでした。
そのため、台本を読んだ時に、第1話の時点で壮絶な人生を送ってこられた様子が描かれていて、イメージのギャップからくる衝撃が大きかったです。完全にフィクションだったらそういう作品はいくらでもありますが、本作は実話をベースに作られているということで、もう興味しかわかなくなりました。
本作での数子は「女性らしさ」を武器にしつつも、威勢を張ることによって自分の弱さを隠している面もある人物像で描かれていて、どこか自分にも似たようなものを感じました。
一方で、実際の細木数子さんからは離れていた部分も多々ありました。たとえば、実際の細木さんは「〇〇なんだい」「〇〇かい」のような江戸言葉をよく使われていたと思うのですが、脚本ではそこが一切入っていませんでした。制作陣が、実際の細木数子さんから離れて、ある程度は戸田恵梨香という人物にあてた細木数子像を作られたのだなということを感じました。
結果的に、私も細木さん本人のイメージにあまり引っ張られることなく、自分の作った「細木数子像」で演技に乗ることができました。
各年代の細木数子を演じ分ける上で意識したポイントは
――作中で、戸田さんは10代から60代までの細木数子さんを演じられました。同じ人物の異なる年代を演じる中で、どのような役作りをされたのでしょうか?
1話の台本を読んだ時点では、10代のシーンだけが描かれていたので、「テレビで活躍されていた60代くらいの頃の細木さんは最終話あたりにしか登場しないんだろうな」と予想していました。しかし、実際の本編ではあんな冒頭から60代の姿の登場があると思わなくって(笑)。
60代くらいの役柄をやったことがなかったので、未知数すぎて「60代のシーンの量を減らしてください」と相談したのですが、実際の本編は“あの通り”の形になったので「これは誤魔化せないぞ」という恐怖感がありました。
年代による変化でいうと、前半は「人生を楽しんで謳歌している姿」を大事にし、後半については「欲望」を強く意識しました。巨額のお金を目の前にした時のふつふつと沸き上がってくる高揚感や、内に秘めた欲望を人前で隠しきれない感じを体現するつもりで演技しました。
それ以外ですと、細木さんに限ったことではないのですが、口角を下げるとか、年齢を重ねていく中で誰にでも起きる表情の変化みたいなものはやはり意識しましたね。
60代の細木さんのシーンは最後に撮影させてもらったのですが、10代から40代ぐらいまでのシーンはある程度順を追いながらも、割とバラバラで撮っていました。なので、1日の中で、40代をやって10代をやって20代をやって……という日もあり、それぞれの年代で喋り方など演技も変えていた分、ちょっと混乱してしまうこともありました。
特殊メイクで譲れなかったポイントも
――細木数子さんを演じるにあたって、仕草や見た目などについて意識した部分はあったのでしょうか。
作中では私が指2本で口元を拭うような仕草が何度か出てくるのですが、これは過去に細木さんの番組で、彼女が話を聞いている合間に複数回やっていた仕草でした。「これはきっと癖だったんだな」と思ってやってみたところ、監督から「ちょっと待って、その仕草何?」と聞かれました。事情をお伝えしたところ、作中では意味を持たせるシーンで使う形になりました。
60代の細木さんを演じるにあたり、3時間かけて特殊メイクをしたのですが、メイクについても私から希望を出した点がありました。
最初に監督が提示したのは、シワシワのおばあちゃんのようなイメージでした。しかし、実際の細木さんはお年を召されても肌にハリがあって、絶対に何かしらケアされている美しさがあったじゃないですか。監督からは、実際の細木さんと私とでは元々の体つきなどの差から年の取り方も違うから……と説明されたのですが、個人的には細木さんの「美容に投資している感」は譲れなくて。おでこのシワは取ってもらうなど、要望を出しながら特殊メイクの方向性を決めました。
――細木数子さんを演じる上で特に難しかったと感じた点はありましたか?
やはり一番苦労したのは、最後の60代の姿でした。作中に登場する数子は、10代から40代までは段階を踏んでいるのですが、40代から60代までは約20年間の空白があります。安永先生との出会いから、20年の間に一体どんなことがあって、髪にメッシュを入れたあの姿になったんだろう……という穴埋めを自分の頭の中でするのが大変でした。年齢のグラデーションがなくなる分、40代から飛んでも違和感のない60代の姿になれるように計算するのが非常に難しかったです。
反省点はいろいろとあったのですが、違和感が出てしまった部分については監督がしっかり調整してくれたので、信頼して委ねる形で演じることができました。
「細木数子としてちゃんと生きることができている」と感じたシーンは
――「地獄に堕ちるわよ」の中で特に印象的だったシーンを教えてください。
数子が堀田雅也と久しぶりに再会したシーンが一番印象的でしたね。数子は怒り以外の自分の感情をあまり表に出さないような人物像で、作中でもこのシーンでは泣いていないのですが、撮影中に私自身が感極まって号泣してしまいました。
それで「数子はこの時きっと心では泣いていたのだ」と気づき、この瞬間に「作品の中の細木数子としてちゃんと生きることができている」と実感して、深く感動しました。
「その人物を生きることができた」という感覚は、朝ドラや大河ドラマなど長期間かけて撮影する大作でしか感じることができないものだと思っていたので、たった半年くらいの撮影期間だった今作でその体験ができたことにかなり驚きましたし、この作品に出会えたことが宝物になりました。
――細木数子さんを演じる中で、彼女に対する印象に変化はありましたか?
元々は「存在は知っているけれど好きでもないし、嫌いでもない人物」というフラットな印象からのスタートでしたが、演じる中でこれだけ世間を巻き込み、混乱に落とし、賛否を巻き起こすとんでもないエネルギーを持った人が、実際はこんなにも大きく深い孤独を抱えていたということを体感できて、細木数子さんという人物にとても興味を惹かれました。
私自身も、一人じゃないのにずっと孤独を感じてきました。多分、自分の中に「現状に満足がいかない」という感覚があるからだと思います。「地獄に堕ちるわよ」で数子を演じてみて、あれが欲しい、これが欲しいという彼女の欲望が常に孤独を生み出していたのではないかと思い至りました。「がむしゃらに生きているからこそ孤独なんだ」という、成功者ならではの悲しみを初めて知ることができたような気がします。
細木さんが活躍されていた当時、私の周りにも、彼女の書籍をたくさん持っていたり、その人柄に傾倒したりしている人が多くいて、不思議に思っていました。今回細木さんを演じてみて、彼女の中にある強い欲望や、壮絶な体験をしてきたからこそ出てくる言葉の重み、説得力が多くの人を惹きつけたのかもしれないと感じましたね。
――最後に、戸田さんの俳優としての今後の展望について教えてください。
一時期、役作りとして「キャラクターの個性を作ること」に夢中になっていた時期があったのですが、今は「役の肉付けをしたあとで、それを削ぎ落としていく」というアプローチに取り組んでいます。
『地獄に堕ちるわよ』で改めて土台をしっかりつけなくちゃいけないなと気づいたので、また芝居の質を変えて、別の土台を新たに作り上げたいです。
Netflixシリーズ 『地獄に堕ちるわよ』
配信開始日:2026 年4 月27 日(月)より世界配信開始
話数: 全9話 (一挙配信)
出演: 戸田恵梨香 伊藤沙莉 三浦透子 奥野瑛太 田村健太郎 中島歩 細川岳 中村優子 市川実和子 高橋和也 杉本哲太 余貴美子 石橋蓮司 富田靖子 生田斗真
監督:瀧本智行 大庭功睦
戸田恵梨香さん衣装・スタッフクレジット
・衣装
ブラックウールダブルブレストクロップドスペンサージャケット¥448,800
ピンクシルク混タフタフリルタンクトップ¥160,600
ブラックウールワイドレッグパンツ¥214,500
リング¥69,300(参考価格)
ブラックプラットフォームパンプス¥223,300/以上クロエ(クロエ カスタマーリレーションズ)
・スタッフ
スタイリスト:影山蓉子
ヘアメイク:Haruka Tazaki



